初めてのチューニングがミッションのせかえ!
JZA80スープラ 愛知県豊田市 肌附裕矢 Yuya Hadatsuki
どうも始めまして! このたび、JZA80スープラ オートマ車にマニュアルをのせました。その時のことをレポートしたいと思います。
みなさんのレポートにくらべると内容が見劣りするかもしれませんが、そこは超初心者!
初心者というよりはエアクリーナーすら交換したことがない、何も知らない18歳です。
「初心者にもここまでできる!」に、挑戦したレポートだと思ってください。
作業をした環境ですが、実は家が車の鈑金塗装をやっています。工具と場所には恵まれているのですが下回りをばらすための道具やリフトなどはありません。しかも仕事をちゃんとやっている(当たり前ですね)ため、日曜日しかあきません。友達も少なく(さみしー!)協力してくれるのは一人だけ… というなかなか?の、環境です。
まずは部品集めです。もちろん新品なんか使いません。当然中古です。しかしゲトラグ6速は人気があるんですね。見つけるまでに半年待ちました。ほんとは廃車ごとほしかったのですが、中古パーツ屋から買ったので「MTのせかえキット」なるものを買いました。
ついでについていたデフも買ってきます。しかし高い!5速が5万円なのに、23万もしました。1速ふえただけで18万です。しかもこの「のせかえキット」でとんでもないことになるとは… でも業者ということで消費税は無しになったからよいことにしました。
このキットの内容は表1を見てください。
そこで実際の作業なんですが、ペダルをつけるのとミッションのせかえと分ければ車が動かない時間が減ります。まず練習としてペダルを先につけてしまいます。
車をよく見てみるとクラッチペダルを取り付けるであろう窪みがあいています。ボルトは3本中1つがすでに穴がありました。ですから、穴を空けるのは3個所のはずです。ですが、一つボルトの穴がどうしても分かりません。ペダルの方にあいているはずの穴が空いていないのです。でも、めんどくさいので無視です。これで穴あけが2個所になります。穴の位置がはっきり分かっているのはプッシュロッドがエンジンルームに出ていく穴です。ですが、この穴は形が難しく(図2)悩んだ末、真ん中の大きな穴だけ空けてしまいます。そしてその穴を頼りにペダルをだいたいの位置に置き、残りの二つの穴の位置を見ます。それをよーく記憶しておき、穴を空けようとドリルを… なんと、ドリルが入りません。仕方なくエンジンルームから勘を頼りに開けてしまいます。そしてドキドキしながら仮付け… 合うはずがありません。 穴をかなり大きくして、なんとか入れます。大体いい位置まできたら、残る1つのボルトの穴を空けます。このボルトは長いボルトに代え、裏からナットで締めつけます。マスターシリンダーを付け、すべてを閉めます。特にぐらぐらすることもなく、いいかんじです。しばらくはこのまま、オートマ ペダル3つ仕様で乗っていました。
さて、残るは本体のみです。この時点で、あと加工をするところはないだろうと思っていましたが… 問題は作業をやる日です。そこで初心者はとんでもない決断をします。「土曜日の夜10時から一日でやる!」 という今思えば無謀ともおもえる作戦です。
いよいよ作業開始!
とんでもなく重いミッションを運び込み、シャッターを閉めた工場の中で作業を始めます。豊田工業自動車科で学んだことと、いままでよんできたCARBOYだけがたよりです。まず、車をあげないといけません。普通のジャッキでは車高が低すぎて入らないので、木の上に車で乗り上げます。そこでジャッキで上げタイヤを一つ入れ下ろし、今度は後ろ…と、言うようにしてタイヤ2本ぶんまであげました。これで30分…先が思いやられます。
修理書を見て車の中からばらしていきます。今までATのシフトノブをどうやってばらすのか疑問でしたが、根元に隠れビスがあるとは… こうやって大人になっていくんですね。
比較的簡単にばらせた中を終え、下に潜ります。最初は寝板を使っていたんですが、下にダンボールを敷いたほうが楽でした。これはお勧めです。
いよいよATミッションを外しにかかります。まずはプロペラシャフトです。ボルト、ナットをゆるめミッションから抜きます。オイルが垂れてくるのは知っていたんで覚悟していたのですが、ほとんど流れてきませんでした。
軍手で穴をふさぎ、ミッションとエンジンの取り付けボルトを見ます。どれも取りにくそうです… ながーいエクステンションがいることも分かっていたのですが、もちろん買わず作りもしませんでした。短いのなら家にたくさん転がっているので5〜6個つなげ、代用します。思いっきり使いにくかったですがインパクトがあるのでそれで無理矢理取ってしまいます。2種類サイズがあることに取ってから気づきましたが、もちろんあった場所なんか忘れています。そんなこと初心者なので気にせず全部取りました。が、ミッションはびくともしない。もう一度あまっているボルトがないか確認しますが、ない… そこでミッションとエンジンの隙間にマイナスドライバーを叩き込んでやります。見ていた友人が心配するほど叩いていたら、やっと隙間があきました。初心者は思い切りが肝心です。ミッションを思いっきり揺すってやると、どんどん隙間が広がっていきます。ふー ひと安心… と、いうときにふっと見ると黒い線が… そうです。配線をすべて忘れていました。何でこんな物を忘れていたんだ?と、いうぐらいたくさんのコネクタをはずしていきます。全部はずし、もう一度ミッションを揺すります。が、外れてこない… もう一度よく見るとミッションからワイヤーが出ています。たどっていくとアクセルワイヤーとつながっています。何のワイヤーか分からないまま邪魔なので外していきます。初心者は悩んでいては先に進みません。
ミッションの下にジャッキを置き慎重にエンジンとはずしていきます。20cmぐらいの隙間が空いているのですが、そこからなかなか外れません。もうじれったいのでジャッキをはずし思いっきり蹴ってやります。ゴンッ!!と、すごい音がして落ちました。下のコンクリートが少し割れてしまいましたが、外れないよりはマシです。
やっと外れた重いミッションを二人でどかし、次はデフです。これは楽そうです。ドライブシャフトとボルト3本でとまっています。全部はずすところが見えているので次々にはずしていきます。今度は落とさないようにジャッキを支ってゆっくりおろしていきます。
ミッションスワップをやってから初めて順調にいった作業です。
やっぱりつきもの トラブル発生!
ちょっとした休憩を取り、眠い目をこすりながら(午前3:00)作業を始めます。
エンジンについているトルクコンバータをはずします。が!どう外していいのか分かりません。 なんで修理書には書いてないんでしょう? ドライバーでこじってみたり、ハンマーで叩いてみてもまったくだめ。しかし、一呼吸して見てみると、裏側にゴムのふたが…
やっとボルトを見つけました。(表3)
ここからが、マニュアルミッションの取り付けです。まず、フライホイールをつけます。ボルトは再使用しないほうがいいのは分かっているのですが、商売がら細かい部品は頼みにくいのです。ゆるみ止めもないのでつけません。ちなみにトルクレンチも使いません。すべては長年(数ヶ月)つかってきた、手がたよりです。
フライホイールをつけ終わったら、ミッションの配線の加工です。思っていたより加工をするところが少なかったです。(表4)今回はすべてギボシで加工しました。
いよいよ、今回のメインイベント!マニュアルミッションの、取り付けです。クラッチにセンターだしがいるかと思われたのですが、クラッチディスクを取り出さなければしなくてもいいようです。普通のとは違い、ミッション側にディスクなどを取り付けてエンジンとドッキングしろ、 と、書いてありました。これはラッキー。ディスクのセンターだしのSSTなんて持っているはずがありません。重い(ATよりは軽い)ミッションをジャッキの上に載せ、ゆっくりエンジンにさしていきます。しかし!! 残り5cmというところから奥に入っていかない! と、いうよりはかなりミッションを斜めにしないとはいっていきません。
これには、困りました。どうしようもなかったです。やはり初心者には無理なのか…と、本気で思っていたその時… この仕事でよかった。 なんと、仕事で偶然6速のスープラが入っていたんです。お客さんのですがちょこっと中身をみしていただきます。しかしそこには、見てはいけないものがありました。何とスープラは、ATとMTではフロアの形が違うのです!マニュアルのほうがかなり大きく、膨らんでいます。(図5)
かなりショックでしたが、形が違うとなれば諦めもつきます。初心者はこんなもんです…などと言っていては立派なプライベーターにはなれません。ATのフロアを斬ってしまいます。かわいさあまって憎さ100倍、とはこのことでしょう。斬らなくてもいい奥のほうまで斬ってしまいました。みなさんがやるときはこの穴をできるだけ小さくしないと、インパネまでばらさないといけなくなる可能性があります。
これでやっとミッションがつきました。今度はデフです。相変わらずデフは順調に…とはやっぱりいきませんでした。デフを簡単に取りつけ「さあドライブシャフトを」と、思ったらつきません。これは致命的です。部品屋を信じた自分が、あさはかでした。
今日は、あきらめです。部品を探さないといけません。でもできるところまではやってしまいます。元気がなくなるとなぜかうまくいくもので、オイル、ペラシャフト、シフト周りを組んでいきます。この時に苦労したのが、フライホイールとプレッシャープレートのボルト止めです。これはミッションをつけた状態での作業だったのでボルトの穴を見つけるのが大変でした。ちょっとずつエンジンをまわしていかないといけないので、最初にあわせマークをつけておかないと大変です。
とりあえずエンジンをかけてみます。ドキドキしながらキーをひねります。マフラーをつけていないため、ものすごい音がしますがちゃんとかかりました。今日はここまでです。
すべてが終わったのは、作業を始めて13時間後。家に帰ってすぐ寝ました。
インターネットで部品集め。
このままでは車が動かないままなので、何とかしなければいけません。いる物はRZのドライブシャフトです。しかも、残された期限はあと4日しかありません。(この時月曜日、金曜日にはアメリカへいく予定) いちかばちかでインターネットで探してみます。
この時利用したのは、スープラオーナーズクラブ SOC です。スープラオーナーは 覗いていてみることをお勧めします。とてもためになります。
アドレスはhttp://www.pocket.ne.jp/soc/index_top.htmです。そこの売買掲示板で、ドライブシャフトを探します。
そしたら次の日に返事がありました。そしてその次の日に送っていただき、そのまた次の日に届きました。(無理を言ってしまいましたがたすかりました。SHOさんありがとう!)これでなんとかなりました… とはいかないのが自営業のつらいところ。工場が使えません。結局作業の始まったのが、木曜日の夜。また徹夜です。
ですが、今回の作業はドライブシャフトをつけるだけです。重いスープラを二人で押し、前の方法で車をあげます。さっそくタイヤを外し、割ピンを外し、でっかいナットを外します。
が… 合うサイズのソケットがない! わざわざ借りてきた工具セットにも入っていないサイズでした。もう今日の作業はおしまいか…と、あきらめかけていたとき、偶然にも合いそうなソケットがありました。しかし、サイズはインチです。ぴったり合いません。ここは一発勝負です。インパクトを最大まで強くして、神に祈ります。やりました! 両方とも成功です。初心者に神は味方をしてくれました。後は簡単です。ドライブシャフトお思いっきり叩いて抜き、交換して終わりです。外すとき、ブレーキにCRCを塗ってしまったのでよく洗って組み付けます。あとは、マフラー タイヤ シフト回り などとオイルを入れれば終わりです。私の場合、ミッション デフ が降りているときに入れていたので今回はこれで終わりです。
とりあえず走るようになりました。フロアに穴が空いたままですが、早速試乗に出かけます。自分が組んだことなど忘れてしまうぐらい、あっけなく走ってくれます。10分ほど走ってオイルなどを点検します。
(この時に、O/D Off の、ランプが点滅していたのですがこの後メーターを替えてしまったので今どうなっているのか分かりません)
何も異常がないことを確認して作業を終えます。この日の夜にはアメリカに行くために飛行機に乗らないといけません。フロアに穴が空いたままのスープラと1ヶ月お別れです。
アメリカにいるうちに自分も19歳になりました。日本に着いていろいろやることはあったのですがまず、フロアを何とかしなくてはいけません。まず鉄板を見つけます。ちょうどいいことに要らないスープラのフェンダーが落ちていました。これで即席フロアを作ります。ハンマーと金きりはさみで形を作ります。(図6)ドリルで穴を空けフロアに仮付け。そしてリベットを3個所に打ちます。奥のほうにも打ちたかったのですが、ドリルが入らないため、手前だけにしました。ミッションをおろせばいいのですが、そんなに初心者は我慢強くありません。手抜きをします。奥のほうの隙間には、シーラーをたっぷり塗り隙間を埋めます。鉄板の裏にアンダーコートなどを塗っておけば走行音も小さくなると思います。
そこら中にシーラーが飛んでしまいましたが、やっと完成です。インパネ回りを全部組んでしまいます。
一時は元に戻るか不安だったスープラが、生まれ変わりました。ミッションからの音が気になりますが、元々こんな物らしいので気にしないことにします。それよりも、自分で初めての改造がこんなにうまく行くとは思いませんでした。初心者でもやればできる! と、いうところが証明できたのではないかと思います。
最後に、延べ24時間もの作業を手伝ってくれた永田正一君。本当にありがとう。
表1 のせかえキット内容
クラッチペダル
ブレーキペダル
クラッチマスターシリンダー
オイルライン
フライホイール
クラッチディスクASSY
ミッションASSY
プロペラシャフト
ボルト ナット 以上で23万円
ほかにいるもの
デフ 1万円 これはキットとは別に買った
ドライブシャフト(RZ用) 1万ちょいほど
図2 ペダルの穴 図3 トルクコンバータのボルト