2011/10/03

レストアレポート 10月号

 


 

9月初め頃、はやぶさ関係で「SF大会」という

ものに参加してきました。

みんなの前でしゃべりました。

もっと話しを上手くなりたいです

ちなみに、来月もはやぶさ関係のイベントがあります。

 

 

レストア

最近はレストアしまくってます

2日でサンダーの砥石を2枚ぐらい消費するほど鉄を削りまくってます。

 

左ドア下

以前のレストアで、錆びた鉄板の上に、薄いステンレス板をスポット溶接で

貼りつけてあります。

まあ、ステンレスを使うのは錆びないためなんですが、そりゃあ貼りつけた

ステンレスは錆びないでしょうが、貼りつけられた鉄板はたまったもんじゃないです。

錆びて穴が開いた鉄板にステンレスとの電蝕で、水もたまりやすい。

錆びる要素をすべて兼ねるので、あっという間に下の鉄板が

激しく腐食。サビが薄いステンレスを持ち上げてパテが割れてきます。

 

貼りつけてあったステンレスを取り除く。

0.6mmぐらいの厚さでした。

片面スポットだったので、貼り付け強度も弱いです。

そもそも錆びてますし。

 

錆びた鉄板を切り取り

 

 

こうなります。

錆びている部分を残しておいても意味が無いので、潔く切り取ったほうがいいです。

さて、問題はここから。

 

これを直していくわけですが、そもそも直すというのを

どういうこととするかから考えないといけません。

 

なぜ、この車を直した人はステンレスを貼ったのか。

ステン板を用意して片面スポットができるんですから

間違いなくプロです。

おそらく、そういう方法でないと予算内に

終わらせられなかったのではないかと。

ステン板を使うことは論外ですが、これが鉄板を張ったなら

そんなにわるい補修方法じゃないです。

手軽にできるということは、安くできるということです。

強度的にも問題ないですし、補修がわかりやすい。

補修方法に悩むことが少なくなります。

欠点として、鉄板を貼り付けただけなので

その部分がまわりよりも高くなります。

これを誤魔化すために、何もダメージのない鉄板にもパテを使って

面を合わせないといけません。

しかしそれも、パテを防錆塗装と考えれば悪く無いですし。

最低限の溶接ですむので、サビの再発も起きにくいです。

 

さて、今度は私が直さなくちゃいけません。

私に出来る方法は3つ

1.鉄板を貼り付け

2.鉄板を継ぐ

3.ドアパネルを作りなおす

 

残念ながら、3は無理です。

かかる時間だけを考えても、他の作業の10倍ぐらいいきそうです。

ドアパネルだけを考えればなんとかなるかもしれませんが、

どうせパネルを作り直すなら内側の骨も・・・

こうなったら総剥離で・・・

どうせならエンジンおろして・・・

と、絶対に際限なく作業が増えていきます。

 

1と2で悩むわけですが、個人的には継ぐ方法をとることが多いです。

フランジなどを使って鉄板を重ねることなく、切り取った穴ぴったりの

鉄板を用意して、溶接で繋いでいく作業です。

 

仮付。

少しずつ溶接を増やしていき

全周溶接

ビードを削る

これで穴はふさがり、元の鉄板と同じ強度になりました。

しかしこれ、致命的な弱点があります。

溶接で歪むんです。

鉄板を溶接する方法は、大きく分けて二種類

ガス溶接と半自動(ミグとか炭酸)になります。

私は半自動をメインに使用していて、ガスよりも鉄板が歪みにくい溶接方法です。

まあたしかにそうなんですが、どれだけ上手く溶接しても、歪が出ないように

することは不可能です。

あたりまえですよね、鉄が溶ける温度まで熱してるんですから。

そして、半自動溶接は鉄板を絞って歪を直すことが非常に難しいです。

ガス溶接の場合、裏側に当て板が入るスペースが必要という大前提がありますが

ハンマリングをしながら溶接していけば、かなり綺麗に

つなぎあわせた鉄板を一体に出来ます。

半自動の場合は、溶接ビードを境に鉄板のノビが変わってしまい

あとから絞ろうと酸素で炙ると、つなぎあわせた鉄板が

各自バラバラに動いてとんでもないことになっちゃいます。

 

ちなみに、最近の車のボディーパネルに使われている

超高張力パネルは、どんな方法だろうが

火を入れた時点でどうしようもなくなってしまう鉄板なので注意が必要です

いくら絞るのが難しいとはいえ、そのままではパテも付けられないので

無理矢理絞ります。おかげでパテがどうしても多くなります。

 

隣のフェンダー部分も切り貼り

 

こんな感じで切り貼り終了

パテを付けるわけですが、鉄板についた#60ぐらいの傷に

そのまま板金パテを塗ったって埋まるはずがないので、プライマーを使用します。

旧車はもともとパネルの状態が悪い場合が多いので、鉄板にパテを付ける場所は

全部使いますが。

 

右 クォーター下側

ここも同じように・・・

切り貼り

溶接 絞り

 

右フェンダー

相変わらずステンレスが貼られているので、

全部切り取り

つなぎます

 

このように、バリバリ切り貼りしてました。

惜しむらくは、これらがすべてヨタハチではなく仕事の車ということです。

それと同時に、仕事でレストアすれば結構なスピードで作業が

進んでいくものと感心します。

この車が完成しないことには、ヨタハチどころか通常業務にも支障をきたします

 

 

通常、うちではレストアを仕事としてやっていません。

これは、どう頑張っても採算が取れないからです。

レストアのような作業は、本当に色々な作業の組み合わせで

色々なことを覚える必要があり、創意工夫の連続です。

にもかかわらず、時間あたりの工賃は普通の塗装作業と変わりません。

時間も手間も技術も必要なレストアは、正直に時間工賃を請求すると

とんでもないことになっちゃいます。

ドアの脱着に1日かかっても、5万円はもらえないでしょう?

1日で取れないドアなんてザラにあるのに。

いまいじってる車も、他の板金塗装屋がどこも引き受けなかったから

うちにきました。

おそらく、フルレストアをしてくれるお店はどんどん少なくなるでしょう。

引退したプロが道楽でやる以外に、どうやっても成り立たないですし。

近い将来、旧車は自分で治すしかなくなる・・・という時代が

現実になる気がします。

それはそれで楽しそうですが。

 

これだけ鉄を切って削ってると、本当にお風呂が錆びます。

注意しましょう

 

 

 

 

 

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